F-1名勝負の1ー1992年モナコGP

 近年のF-1シーンでの名勝負と言われているレースを幾つか、順不同(あれだけのレースに順位を付けたら、ドライバーに怒られそうだから)で紹介していきたい。

 まずは、1992年のモナコGPから入っていくことにしたい。

 理由は特にないのだが、今は亡き“アイルトン・セナ”と“ナイジェル・マンセル”のラスト5周のバトルが、なんだか今でも鮮烈に思い起こされるからかも知れない。

 この年、アクティブサスペンションを搭載した“FW14B”は、マンセルのドライビングと共に他を圧倒していた。

 開幕からここ、モナコまですでに5連勝を果たしており、他の追随を許してはいなかったのだった。無冠の帝王と呼ばれていたマンセルの野望を、FW14Bは一歩一歩達成へと導いていたのだった。

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 迎えたモナコGP当日5月31日、PPはナイジェルマンセルでタイムは1’19″495。マクラーレンMP4/7Aを駆るアイルトン・セナは、この年の定位置になりつつある三番手で、タイムは1’20″608だった。1秒以上開いたタイム差は、ある意味では絶望的な差を意味していた。

 ここ、モナコではオーバーテイクポイントが殆どなく、予選での順位とタイム差がそのままレース結果として出てしまうことが、ある意味では確実視されているからだった。

 しかしセナは落胆してはいなかった。モナコのコースの特性としては、ストップ&ゴーであり、空力の劣勢はあまりないからだった。予選と違い、レースでは何が起こるか判らないと言う一点に、セナは掛けていたのだった。

 うまいスタートを切ったセナは、予選二番手のリカルド・パトレーゼをかわしてポジションを一つ上げて二番手で一コーナーに飛び込み、マンセルを追った。

 しかし、この年のウイリアムズ&マンセルは最強のコンビで、いくらセナが頑張ってもその差はじりじりと開いていった。

 そのままレースは60週目に入り、マンセルとセナの差は約30秒となり、オーバーテイクのチャンスは全くなくなってしまった。

 ここまで3連勝を含む、通算4勝を挙げているモナコマイスターのセナでも、FW14Bとマンセルのコンビにはなす術もなかったと言う訳だった。

 しかしこの週に、マンセルにとってもセナにとっても、全く思いがけないことが起こった。

 マンセルのマシーンにタイヤの警告灯が点滅し、マシーンの挙動がいっきに不安定になったのだった。何週か前に、ウオールにヒットしたことが原因だろうと、後にマンセルがかたっていた。

 急遽ピットインして、タイヤ交換をしたマンセルがコースに戻ったときには、セナはすでにマンセルの前に出ていた。

 ここからマンセルの猛追が始まった。バックマーカーを強引にかわして、ようやくセナの後ろ姿が見えたときには、すでに残りは5周になっていた。

 タイム差は5秒ちょっとだった。

 圧倒的にマシーン性能が有利で、更にフレッシュタイヤを履いたマンセルはあっという間にセナに追いついた。

 マンセルはファーステストラップを連発して、74週目にはこのレースのファーステストラップになった1’21″598を叩きだした。そして、75週目にはその差を1秒弱までにつめたのだった。まさに、テール・トゥー・ノーズとはこの事で、今まで言われたテール・トゥー・ノーズとは違う世界のものだった。

 マンセルはあらゆるコーナーで、セナに揺さぶりをかけたが、セナは動じなかった。

 しかし、履き古しタイヤのセナには、常識的に考えて全く勝ち目はなかった。

 

 だが、セナはレコードラインからは絶対にはずれず、最善を尽くした走りをした。

 周りから見ると、セナが上手くブロックしているように見えたのだろうが、セナにはそんな余裕はなかったと思われる。

 すり減ったタイヤで、マンセルと渡り合うためのスピードを維持することは、まるでアイスバーンの上を走るような正確さを要求されたからだった。

 残り2周のヌーベルシケインにマンセルは全てをかけて、セナに襲いかかった。

 セナは意図したかどうかは別にして、マシーンがスライドして、結果的にマンセルの強襲を跳ね返したのだった。

 接触しない限り、セナを抜けそうもなく、マンセルはより一層マシーンを責めたてた。ローズヘアピン前では、左フロントタイヤから白煙をあげるほど攻めた。

 しかし、セナは押え切り、チェッカーを受けた。直後、セナのマシーンの後ろからは、白煙が上がった。

 ゴールしたマンセルは、マシーンから降りるとコースにへたり込むようにして、座ったまましばらくは動けないほど疲労困憊していたのだった。

 こうして、セナのモナコ通算5勝目、連続4勝は達成されたのだった。

 心に残る、クリーンなバトルだった。

 このレースは各動画サイトでも見ることができる。

 是非、見ていただきたいと思う。

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